【翁の漫画評】百万畳ラビリンス たかみち 55点
タイトル:百万畳ラビリンス
作者:たかみち
連載期間:2013~2015年 完結(全2巻)
評価点:55点
あらすじ(公式引用):
人と関わるのが苦手な礼香はゲーム会社でバグ探しのアルバイトをしていたが、ルームメイトの庸子と共に木造迷路に迷い込んでしまい!?ミステリーファンタジー!
ロリコン雑誌コミックLOの表紙絵で知られるたかみち先生の描くSF中編。
イラストレーターとしては知っていたものの漫画も描くとは知らなかったので、なんとなく『四畳半神話大系』を思わせるタイトルも相まって期待して読んだのだが、正直、あまり…合わなかった(やわらかい表現)。
各所で評価が高いのも知ってるんだが、私はダメだった。
何がダメだったかと言うと、キャラクターの共感性のなさという一言に尽きる。
一介の女子大学2人がいきなり異次元にとばされるという展開に加え、外敵がいる(ここ重要!)という状況にもかかわらず、一切の危機感がなく、ゲームを楽しむように謎解きをするというぶっ壊れたキャラクター像に全く共感できず、読み進めながら違和感しか感じなかった。
なぜ「恐怖」の描写をここまで排除したのか、私には理解できない。
最初から仮想空間であり実体は安全であるという前提条件があるならともかく、自意識、肉体感覚がある人間の思考回路としてとても納得できるものではない。
『アイアムアヒーロー』ばりのクライシスが起きているのに、状況を理解できてないアホなのか、分かった上で楽しんでるサイコパスにしか見えない。
なにより、異次元世界のギミックや支配者の存在といった設定にこだわるのであれば、シチュエーションスリラー的な要素を取り込んだ方が絶対に説得力が増すし、結果的に作品としてのクオリティが上がると思えて残念でならない。
まぁ、当然、最初の最初っからそういう話は編集者ともしただろうし、あえての選択だということはわかるが…作者がそれを描きたくなかったのか、力量的に難しいので避けたのか…
とはいえ、結果的に評判がよかったならそれが正解だったとも言えるのかもしれない。が、あくまで個人的には最低限の人間の心理は描き、上下巻でなく10巻くらいかけて丁寧に作って欲しかったというのが率直な感想である。