【翁の漫画評】キングダム 原泰久 92点
タイトル:キングダム
作者:原泰久
連載期間:2006年~連載中 既刊42巻(2016年7月現在)
評価点:92点
あらすじ(公式引用):
時は紀元前、春秋戦国時代。いまだ一度も統一されたことのない中国大陸は500年もの動乱期。 戦国七雄の一つ「秦国」の身寄りのない少年・信と漂は、今は 奴隷のような身なれど、いつか武功をあげて天下一の将軍になることを夢見て修行に励む。そんな二人が偶然、秦国の大臣に出会ったことから運命の歯車が動き出す!
時代は春秋戦国時代。
『封神演義』では姫発が<殷>の紂王を倒し、武王として<周>という国を立ち上げるところで人間界のストーリーは大団円となったわけだが、武王から十数代も下っていくと<周>はだんだんと勢力を失っていく。
さらに<周>は内輪もめで<西周>と<東周>に分かれて没落し、代わりに“春秋五覇”といわれる<斉><晋><秦><宋><楚>の五国が勃興する(<呉>や<越>が入る場合もある)。
これが春秋時代のはじまりで、これがだいたい紀元前771年くらい。
で、300年くらいゴチャゴチャやって、紀元前403年に“春秋五覇”の内の一つ<晋>が<魏><趙><韓>の三国に分かれる。
こっからが戦国時代。これを合わせて春秋戦国時代というらしい。
以上、wikipediaを超要約。
何が言いたかったかと言うと、『キングダム』は『封神演義』からだいたい800年くらい後の話であるということ。
あれ?思ったよりあるな。年表だと周の次が春秋・戦国なんだけど…。
ちなみに、この頃日本は弥生時代。紀元前なので、まだ卑弥呼すら全然生まれてない。
ヨーロッパはというと、『ヒストリエ』のメインであろうディアドコイ戦争(いつ始まるんだよ)が紀元前323~281年なので、『キングダム』は『ヒストリエ』より少し後の話ということになる。
さて、肝心の『キングダム』の内容はと言うと、信という賤民出の兵士と、政という<秦>の王子のダブル主人公体制で進んでいくわけだが、政ってのは要するに始皇帝のことである。
始皇帝は、史上初めて中国を統一した皇帝ということで日本でも中学社会の教科書に間違いなく出てくる偉人である。しかし、初めの5ページ目くらいに出てくるので忘れられがちである。
中国史上初の皇帝だから偉人なのであって、つまり史実通りいくなら、政の治める王国である<秦>が、他の王国を次々滅ぼして中国を統一し、帝国となるのが筋である。
あれ?ならばなぜタイトルが『エンパイア』でなく『キングダム』なのだろう。
帝国になるまでのお話だからってことだろうか。それとも、史実とは別の展開が用意されているのかもしれない。
見どころは何と言ってもダブル主人公ということで、「戦争パート(信)」と「政争パート(政)」の二つの軸が絡み合って進んでいく物語。これがどちらも最高に面白い。
戦争パートは中世以前ならではの一騎打ちがあるのが燃えるし、政争パートもこれぞ古代中国と言った感じ。
この両方を十分に描けば、面白くなるのは当たり前。
深く考えずバトルものとして読んでも面白いし、少し勉強してみるとさらに楽しめるのは歴史もののいいところ。いや、何でもそうか。
ネックになるとしたらその長さ。個人的には長く楽しめるのは嬉しくもあるけど、現在42巻でようやく折り返したか、という印象。
ヤング誌で80巻なんて聞いたことないけど…でも『嘘食い』が50巻くらいで終わっちゃいそうだから『キングダム』にはずっとやってて欲しいという気持ちもある…。
アメトークで「キングダム芸人」なんてのもやって人気も上がってきたと思うので、未読の方も是非、巻数に引かずに読んでみて。
ただし、翌日仕事や学校があるなら、一気読みによる夜更かしには注意。