【翁の漫画評】大東京トイボックス うめ 72点
タイトル:大東京トイボックス
作者:うめ
連載期間:2006~2013年 完結(全10巻)
評価点:72点
あらすじ(amazon引用):
ゲームクリエーターを目指す元気な関西娘・百田モモ。かろうじてゲーム制作会社スタジオG3の企画見習いとなる。しかし、待っていたのは夢と現実の違いを痛感させられる、リアルな修行の日々だった!面白いゲームのことしかアタマにない天川太陽、キャリアだが隠れた趣味を持つ月山星乃ほか、個性豊かなアイツらが、今日もアキバの片隅でゲーム魂を燃やす!熱いゲーム業界物語、ここに再起動!!
2016年夏アニメ「NEW GAME!」が話題と言うことで、1話見てみた。
なんというか…、正直、「SIROBAKO」がヒットした直後だけにフラットな目で見れない。
「SIROBAKO」ゲーム版で二匹目のドジョウ狙いなんだろ?という勘繰りがチラついてどうにもダメですわ。
そういうわけで、今日はゲーム業界ものという共通点を持つこちらを紹介。
実は『東京トイボックス』という作品の続編なんだけども、『大東京』単体で読んでも特に問題はないと思う。
2014年にドラマ化しているそうなのだが、全く知らなかった。確かに、アニメ化より実写化のほうがしっくりくる作品かもしれない。
とにかく、作者がゲーム好きなんだなぁっていう思いがものすごく伝わってくる作品で、ゲーム開発描写もよく知らないけどゲーム業界経験もあるんじゃないか?ってくらいリアルに感じる。
終盤にいくとちょっと話が大きくなってきてリアル感は薄れてしまうんだけど、テーマ性のある展開なので描きたかった理由は納得できる。
ネタバレになるので詳細は避けるが、ゲームに人生を狂わされてしまったキャラクターがゲームという媒体そのものに復讐を遂げようとする策謀がストーリーに大きくかかわってくる。
甲本ヒロトがダウンタウンを見て自殺を止めた話じゃないが、実際、一本のテレビ番組が、あるいはゲームが、あるいは漫画が、一人の人間の人生を変えることはままあることで、たかが娯楽とバカにできない影響力がそれらにはあるのである。
おそらくこの文章を読んでいるあなたにも、価値観が変わるほど影響をうけた作品がきっとあると思うし、もしかしたらこれから出会うかもしれない。
私にとってはその多くが漫画だったから、こうしてこんなブログを書いているわけだが…。
その影響力の強さゆえに、それらは時に大衆から目の敵にされることもある。
未だに、凶悪な事件などがあると犯人の部屋から不健全なゲームが見つかりました、みたいな不毛な報道が散見される。
いちいちそんなことを警察発表で言うとも思えないし、たぶん、少女がらみの事件とか猟奇殺人があるとマスコミは真っ先にそこを調べてるんだろうな。
それで見つかれば安心するし、見つからないと不安で仕方ないんだろう。
一昔前は「ゲーム脳」なんて言葉が大真面目に語られていた時代もあったし、娯楽の中でも何かとゲームはスケープゴートにされやすい。
そういった一部の偏見に対する答えを、作者はこの作品で訴えたかったのかもしれない。
いずれにせよ、作者の題材に対する真摯な愛が感じられる作品というものはすべからく読んでいて気持ちがいい。
そこには必ずこだわりがあるからだ。ディテールに対するこだわりは作品に奥深さを与える。「神は細部に宿る」とはよく言ったものだ。ガチSFの人たち神宿りすぎ
『大東京』の舞台はアキバなのだが、街の描写にも所々にこだわりが見られる。背景や巻末の設定用語集にも注目してみるとより楽しめるはずだ。