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【翁の漫画評】レベルE 冨樫義博 83点

 

タイトル:レベルE

作者:冨樫義博

連載期間:1995~1997年 全3巻

評価点:83点

あらすじ(公式引用):

HUNTER×HUNTER』の冨樫義博が世に問う異色の連作集! 宇宙一の天才的な頭脳と美貌、そして最悪な性格の持ち主・ドグラ星第一王子…人呼んで「バカ王子」。その魔の手から地球を守るのは…熱血健康優良野球少年7番レフト・筒井雪隆。襲い来る魔物の群れに…不承不承立ち向かう悪ガキ5人組。その智略を尽くした剣・棒・術・策! 塾があるのに…。塾か? 世界平和か? そして…廊下は走るな!

 

 

2016年の富樫先生は再びいつ再開されるとも知れぬ休載地獄に舞い戻ってしまわれたので、今日は古き良き富樫作品をご紹介しよう。

レベルE』は富樫先生の最高傑作と推す声も多い連作SF短編集である。主要キャラや世界観は共有しつつ、だいたい3~5話程度で一編が完結するオムニバス形式をとっていた。

 週刊誌なのにこの頃から月1連載していたのを覚えている。確か、『BASTARD!! 』も同時期に連載していて、ジャンプの大御所休載コンビが全盛期の頃と言えるかもしれない。

 

レベルE』は、今読んでもジャンプに載っていたことが信じられないくらい当時から異色の作品だった。

HUNTER×HUNTER』でもちょくちょく富樫先生のグロテスク趣味が顔を除かせることがあるが、『レベルE』ではそれが作品全体を暗い影のように覆っているし、なんとなく、構図やテンポも少年漫画というより、洋画のような雰囲気を醸し出している。

幽☆遊☆白書』にしても、元は幽霊や妖怪がいっぱい出てくる話がだんだんバトルがメインになってしまったわけで、今度こそ本当に描きたいように描くと言う意思があったのかもしれない。

しかし、ある意味でその姿勢はジャンプの読者層を無視したとも言える。私は当時小学生だったが、正直ブキミだし話も難しくて理解できなかった(倫理と本能の二律背反話から始まり、染色体異常の性同一性障害話で終わる)。

そして結果的に、残念ながら単行本にしてたったの3巻で連載は終了してしまった。やはり、人気が取れなかったのだろうか?それとも富樫先生のネタが尽きたのだろうか?掲載順は覚えてないが、巻頭カラーはほとんどなかった気がする。残当、というしかないだろう。

 

単行本3巻というボリュームの割に、まとめ読みすると意外にもその読みごたえにびっくりするはずだ。そして恐ろしいことに、ほとんどハズレの話がない。全ての話が高いクオリティを備えているのだ。

正直、今すぐにでもアフタヌーンあたりで続きを描いてほしい。だいたいアシ使わない方針を今後も続けるなら、ジャンプで安定的にやるのは腰痛とか関係なく絶対に無理なわけで、着地点の見えないHUNTER×HUNTER』を休み休み描くくらいなら、隔月でも季刊でも安定したペースで創作を続けてほしいと心から思う。

読者の一人として、1冊でも多くの富樫作品が世に産み落とされることを祈るばかりである。