【翁の漫画評】囚人リク 瀬口忍 71点
タイトル:囚人リク
作者:瀬口忍
連載期間:2011~連載中 既刊28巻(2016年8月現在)
評価点:71点
あらすじ(公式引用):
隕石直撃による首都壊滅から10年。近未来都市“東京”のスラム街で貧しくともたくましく生きる栗田陸・13歳が、ある犯罪に巻き込まれ、最果ての監獄へ…!!無実の罪で懲役30年を科せられた少年の破獄バトル!!
週刊少年チャンピオンで連載中の"脱獄もの" 。
無実の罪で投獄された主人公の少年が、獄中で得た仲間とともに「極楽島」というまんまアルカトラズみたいな孤島の監獄から脱獄を試みるというお話。
少年漫画らしい王道の主人公像(素直で仲間思い、まっすぐで決して折れない心)であるという点を除けば、ある意味特筆すべき点のないジャンルものと言えるかもしれない。
腕力もなく、頭もよくないが持ち前のあきらめの悪さでチームの精神的支柱となる主人公のリク。
逆に、ほぼ「脱獄もの」というジャンルそのものの面白さだけで勝負し、それを十分に引き出した上で少年漫画にうまく落とし込んでいるとも言えるだろう。
基本的に無力な子供である主人公が、どうやって厳重な警備をかいくぐって脱出するのかという根本的な問題を、ひとつひとつ下準備を丁寧に描くことで、ギリギリご都合主義的に感じないよう解決している。
仲間の脱獄囚も渋い切れ者役から暴力沙汰役、ヘタレ役まで「チャンピオンらしい」キャラで揃えている。断言するが絶対ジャンプじゃ人気出ない。
左)作中一渋い男、革命家の田中一郎。チームのブレインであり脱出計画を立てる。
右)一番の相棒、佐々木レノマ。剃り込みとコーンロウを組み合わせた最高にチャンピオンな髪型。
ひとつ気になるのは、無実の罪で主人公を投獄した黒幕の鬼道院というキャラがどんどん膨張していき、独裁国家の王みたいな感じになってしまっていること。というか、ほとんどナチスドイツか北朝鮮そのもの。
これはおそらく、国家ぐるみの大掛かりな牢獄や鬼畜のような看守たちの所業を、親玉である鬼道院一人の悪に集約しようとした結果こうならざるを得なかったのだろうが、最終的に鬼道院を失脚させて大団円にするための若干陳腐な設定に見えてしまう。
そういう設定を敷くための下準備の描写として、社会全体が囚人に対して異常な憎悪を抱かざるをえない状況、塀の中に限らず日本全体がディストピア化しているような描写をもっと丁寧に描いていれば説得力があったかもしれない。
また、最初の「極楽島編」が終わって「地獄島編」に入ってから若干トーンダウンというか、ギミックのネタ切れ感が見え始めている。単行本最新刊では金持ちたちの娯楽としての地下闘技場残虐ショーみたいなのが始まってしまったし、未読であるが最近の連載ではかなり無茶な方向転換が展開されているようだ。
ここまで読んだからには完結まで見守るつもりだが、長期連載にありがちな「あそこで終わってればよかったのに…」的な漫画にならないよう願っている。