【翁の漫画評】アシガール 森本梢子 69点
タイトル:アシガール
作者:森本梢子
連載期間:2012~連載中 既刊7巻(2016年8月現在)
評価点:69点
あらすじ(公式引用):
速川 唯は、遅刻・忘れ物・居眠りの常習犯で、恋愛にもオシャレにも関心がないぐうたら女子高生。なんの目標もなくなんとなく過ごしていたある日、弟の尊がつくったタイムマシンをうっかり起動させてしまい、戦国の世へ…!?
タイトルに惹かれて、めったに読まない少女漫画に手を伸ばしてみた。
さすがに少女漫画に本格的な戦国ものは期待してないので、その点の描写についてはスルーで。
純粋にファンタジーとして読んでみて、結構面白かった。
戦国時代にタイムスリップした女子高生の唯は、そこで出会った領主の若君に一目惚れし、若君に見染められるため、また戦死の運命から助けるために奔走する。
左)主人公の速川唯。戦国の世にもすぐ適応。右)イケメンの若君こと羽木九八郎忠清
「やる気のない高校生」が「戦国時代にタイムスリップ」と言えばヒット作に『信長協奏曲』があるわけだが、後発のこの作品にどの程度影響があるのかは不明。
ちなみに、なぜか「黒人が味方になる」というところも共通している。(『信長協奏曲』は弥助というテイなので意図はわかるが、『アシガール』の黒人はよくわからない)
ただ、足が速いという特技があるだけでも、『信長協奏曲』のサブローより唯は有能と言えるかも。
ちなみに同じファンタジー設定でも、『信長協奏曲』の方はタイムスリップ描写は1度きり、現代に戻る気配も0、原因も不明なのだが、『アシガール』は弟がタイムマシンを作るという超展開から始まり、何度も現代と戦国時代を行き来するので、ある意味最初から整合性とかそういう部分については開き直っていると言える。戦国らしく潔い。
ちなみにタイムマシンの燃料は宇宙線を何やら蓄積して圧縮したものであるとのこと。文系の私にはよくわからないが凄そうだ。さらに、この弟くんは刀を模した指向性電撃兵器や、煙を立方体に発生させる煙玉などを開発して姉を助けてくれる。
チープなおもちゃにしか見えないが、すごい機能を持っている。金玉くんは袋に入ってるやつ(意味深
個人的に興味深いのは、タイムスリップの舞台やヒーロー役を全国的に有名な国や武将にせず、ローカルな領主の若君という設定の架空人物?にした点。
タイムスリップ先の1559(永禄2)年と言えば、信長が最初の上洛で剣豪将軍に謁見した年、そして桶狭間で今川義元を破る前年であり、まだまだ群雄割拠の時代であった。
信長もまだ25歳と若いし、17歳の家康なんかも相手役にぴったりの年齢だ。女性人気の高い伊達政宗や真田信繁はまだ生まれてないが。
それでも、織田家や武田家あたりを絡めておけばネームバリュー的に利点はあったと思うが、この作品ではそういった大名は一切出さないことを選択した。
おそらくその方が時代考証が楽という理由もあるだろうが、結果的に他の戦国作品との差別化になっているのではないだろうか。
歴史好きの男性諸君、戦国ものと聞けば有名な武将たちと戦の描写や逸話、正確な時代考証ばかりを無意識に求めていないだろうか。
私はそうだった。でも、たまにはそういうもの抜きで、少女のような視点で戦国を見つめてみるのもいいかもしれない…。
とか言って〆ようかと思ったけど、やっぱ違うな。やっぱり実在武将なし、時代考証なしでは戦国ものとしての魅力はないに等しい。西部開拓時代でも中世ヨーロッパでも何でも代替可能な設定でしかない。
でも少女漫画そのものにある種の敷居の高さを感じている人にとって、戦国と言う要素がそれを低くしている機能はあると思う。
タイムスリップコメディとしての面白さと、純粋に少女漫画としての面白さはあると思うので、ガチガチの学園恋愛ものには抵抗があるが少女漫画も読んでみたいという人におすすめしてみたい。