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【翁の漫画評】ダンジョン飯 九井諒子 88点

 

 タイトル:ダンジョン飯

作者:九井諒子

連載期間:2014年~連載中 既刊3巻(2016年8月現在)

評価点:88点

あらすじ(公式引用):

待ってろドラゴン、ステーキにしてやる! 九井諒子、初の長編連載。待望の単行本化! ダンジョンの奥深くでドラゴンに襲われ、金と食料を失ってしまった冒険者・ライオス一行。 再びダンジョンに挑もうにも、このまま行けば、途中で飢え死にしてしまう……。 そこでライオスは決意する「そうだ、モンスターを食べよう!」 スライム、バジリスクミミック、そしてドラゴン!! 襲い来る凶暴なモンスターを食べながら、 ダンジョンの踏破を目指せ! 冒険者よ!!

 

 

近年雨後のタケノコのごとく量産されている『○○めし』『○○ごはん』系グルメ漫画の中でも、一線を画す存在であるこの『ダンジョン飯』。

・2015年度コミックナタリー大賞・第1位

・このマンガがすごい!2016オトコ編・第1位

・THE BEST MANGA 2016 このマンガを読め!第1位

・全国書店員が選んだマンガランキング2016・第1位

とDHC化粧品もびっくりの錚々たる受賞歴を持つ、超注目作である。

 

ファンタジーの世界でモンスターを調理して架空の料理を作るというコンセプトは『トリコ』の初期とそっくりそのまま同じなのだが、調理の描写、料理の美味そう感のクオリティが高く、いい年した大人でも問題なく読めるものに。世界観の構築も文句なしで、ディテールのこだわり、妙なリアリティが読んでいて心地いい。

たしかにファンタジー上の魔物といえど、すべては人間が想像して生み出した生物。その想像の大部分は、現実の動植物からの発展系で生み出されている。ならば、味や調理法も現実の動植物から想像しうるというのは理にかなった話だ。

ドラゴンはトカゲに似た爬虫類、ケルピーは馬だし、バジリスクは蛇と鶏、なるほどわかりやすい。しかしこの漫画のすごいところは、ミミックや動く鎧といった食べられそうにない魔物も本体は生物として描き、もれなく調理してしまうところだ。

その説明も実に説得力のあるもので、よく考えたものだと感心する。作者がファンタジー世界と料理の両方に造詣が深いからこそなせる技だろう。とにかく次はどんな魔物が出てくるのか、どうやって食べるのかワクワクさせられる。

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ミミックの正体は宝箱を棲家にするヤドカリに近い生物 

 

ここまではある意味企画勝ちみたいな部分だが、物語の展開の仕方にも見るべきところが多い。

ストーリーとしてはドラゴンにやられて全滅しかけたある冒険者のパーティーが、一人犠牲になり食べられてしまったメンバー(パーティーの一人の妹)を助けに再びダンジョンに潜るというもの。

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身内の救出劇だし、時間が過ぎれば消化されてしまうのではという心配もあるのだが、パーティーはいい意味で深刻になりすぎない。むしろ兄貴のライオスが一番探検(食事)を楽しんでいる。

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ぐう畜すぎるぜ兄貴

これはあくまでグルメ部分がメインであるという構造を生かすためにそうしているのは間違いないのだが、登場人物の感情面を最低限さらっと描くだけで淡々と処理されても、読み手も不思議とそれを受け入れてしまえるところがすごい。

もちろんグルメ部分のクオリティがあればこそなのだが、テンポよく淡々と進むストーリーの展開力も見事だ。というか、本来この手のグルメ漫画にストーリーなんてあってないようなもんなのに、そこがきっちりしているからこそグルメ部分との相乗効果でより面白くなっているのだと思う。

 

というわけで、間違いなく誰にでもオススメできる本作品。

あえて言えば、ウィザードリィRPGもしくはダンジョン&ドラゴンズ的TRPGに馴染みのある人にはよりオススメだ。