【翁の漫画評】GANTZ 奥浩哉 70点
タイトル:GANTZ
作者:奥浩哉
連載期間:2000~2013年 完結(全37巻)
評価点:71点
あらすじ(公式引用):
死んだはずの人間、玄野達が体験する奇妙な物語。 一度死んだはずの人間達が、閉じ込められたマンションで、謎の黒い球(ガンツ)から指令を受ける。拒否は出来ず、逃げれば死ぬ、戦う相手は得体の知れない「星人」。 予測不能の展開とCGと手描きを融合させた先鋭的な作画スタイルで描かれる、極限SFスペクタクルアクション!
2000年代にヒットし、奥浩哉先生の代表作となった作品。
マンションの一室に謎の玉…ツカミはバッチリ
ヒット作の御多分に漏れずアニメ化、実写映画化を果たしている。
感想を端的に言うと、良くも悪くもヤンジャンらしい漫画だな~と。
中高生くらいが大好きな設定で、少年誌ではできないエログロを前面に出して、作品全体の完成度より連載のライブ感を重視し、インフレが進んでいく。
バトルは頭脳戦より根性論で、設定に関して深く考える暇がない速度でストーリーが展開し、読者に訴えかける感情の揺さぶりの幅が大きい。
少なくとも序中盤は、一気読みするより連載時のほうがハマれただろうな。
バトルは集中線を多用してスピード感を出しつつ…
スローモーション演出で緩急をつける。こういうところは巧い。
しかしやはりと言うべきか、中盤から終盤にかけて、広げ続けた風呂敷を畳む段においては、かなり投げっぱなしの結果になってしまった。
最終盤、ある場所でガンツによる殺戮ゲームの目的が明かされるのだが、どうも最初に考えていたわけじゃないだろうなという理論だった。
以下ネタバレ(ドラッグで反転)
やはり、どう考えても中盤に出てきた吸血鬼たちの存在は浮いている。
特に玄野の弟が吸血鬼とはどういうことなのか? 弟の登場シーン自体突然出てきて完璧な人間かと思ったら吸血鬼でしたって言われてもポカーンだし、死んだ後も親が出てきても特に言及されないし、主人公の肉親としてあまりにもいい加減な描写だ。
それからイケメンの吸血鬼もあれからどうなったんだ。最初はラスボス感出してたのに
急に仲間になるやつ感出してきて、最終的には放置されるって、やはりいい加減。
それから、結局ガンツの目的は異星人の来襲から地球を守るためというSFとして最も王道かつ凡庸な地点に着地したわけだけど、あんな風にゲーム形式であった理由もよくわからんし、たとえば最初は一般人から見えなかったのに途中から見えるようになったのは何だったのかとか、桜井と坂田の超能力とか気になる点はいっぱいある。
あと最終的な異星間戦争の相手がただデカくて顔が長いだけの人間にしか見えないのがすごくガッカリで、正直作者の発想力の限界を感じた。それに文化まで地球人とそっくり同じって、ちょっと捻りなさすぎでは? ネギ星人、田中星人あたりは良かっただけに、星人の造形には最後までこだわってほしかった。
ネタバレおわり
まぁこういう野暮なツッコミをするような漫画じゃないのかもしれないが、散々言われているように最終回は私も不満だった。あそこまでやったのだから、最後もうちょっと描いても良かったのではないかと思う。
とはいえ色々不満を差し引いても、総合して十分面白い作品であるとは思う。
バンバン人が死んで展開がハイスピードで転がっていくジェットコースターっぷりは、読み進めるのを止められない麻薬のような中毒性がある。
CGを駆使した画風は好き嫌い分かれそうだが迫力のある画面作りに一役買っているし、女の子の描き方も独特のエロスがあって魅力的だ。
中でも殺戮描写、破壊描写は一級品。風呂敷を広げ切っただけあって、まさしく「世界の終わり」を描く絶望感は、今話題の『シン・ゴジラ』に近いものがある。
いや、『インデペンデンス・デイ』の方かな…
知名度が高いだけにハードルを上げすぎると肩透かしを食らう恐れはあるが、SFとしてではなく「ヤンジャンの漫画」として読めば思いのほか楽しめるはずだ。
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