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【翁の漫画評】ふだつきのキョーコちゃん 山本崇一朗 64点

 

タイトル:ふだつきのキョーコちゃん

作者:山本崇一朗

連載期間:2013~2016年 完結 (全7巻

評価点:64点

あらすじ(公式引用):

皆が恐れる学園最強「シスコンヤンキー」札月ケンジ。その「シスコン」と「ヤンキー」には人に言えない深い深~~い事情があるようで…?ケンジと妹との間には一体どんな秘密が……!!?

 

 

普段はツンデレだがリボンを取ると素直になる妹と、妹が心配で不良のふりをするシスコンヤンキーの兄が繰り広げる日常と学園生活を描いた作品。

妹は実はキョンシーで人の血以外の食事ができず、さらにお札代わりのリボンが取れると抑えが効かなくなってしまい誰彼かまわず噛みついてしまう。それを心配する兄が常に見守っているので、シスコン扱いされているという設定。

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左)普段は仏頂面で生意気な妹が…→右)リボンを取るとこうなります

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相当痛い発言だけど、実際こういう兄貴って存在するのかな?

この設定を読んで、そういうの大好物!という人はきっと面白く読めるだろう。

そうでもないかな、という人は、きっとそうでもないだろう。

私は後者だった。

 

ちなみに、キョンシーという設定は「怪力」「血を吸う」という点にしか生かされておらず、なぜ、いつ、どうやってキョンシーになったのか、キョンシー状態から生き返れるのかなどは一切言及されない。

ていうか、キョンシーである必要は何なのか? 吸血鬼じゃなダメなのだろうか。キョンシーって『霊幻道士』のイメージしかないし、若い読者はそれすら知らなそうだけど。

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懐かしき『霊幻道士』のキョンシーたち。中華感がすごい。

やっぱりキョンシーというマイナーで聞きなれない設定を持ってくるなら、それなりの説明と必然性、それを生かす展開が欲しかった。

 

また、両親がおらず2人で暮らしていることについても最後まで理由がわからない。

いや、まったく触れないならまだ気にしないで読めるんだけど、一回作中でそこに触れられて兄妹が言葉を濁す描写があるんだよね。だったらどこかで描くんだろうなと思うじゃん。

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この後回想に入ると思うじゃん?残念!何にもありません!

構想はあったが不本意ながら7巻で終わってしまったということなのかもしれないが、いろいろと消化不良な点が残ってしまっていることは否めない。

しかし、それもむべなるかなというのが正直な印象である。というか、むしろ7巻も続いたのだから描こうと思えばいくらでも描けたはず。1話1話の内容が薄くて、キャラを掘り下げるような話がほとんどなかった。これではツカミが良くてもやがて低空飛行に陥り、打ち切りとなるのも仕方ない。

 

いわゆる萌え的要素に重きを置いたラブコメに対してこうしたツッコミをするのは野暮だろうか? ではキャラクターが魅力的だったのかということについて考えてみたい。

個人的には、そこも疑問符がつく。ツンデレの妹と似非ヤンキーの兄、ボーイッシュな空手少女、心優しい委員長タイプのメガネっ子、ちょっとやさぐれた年上のお姉さん。

以上がレギュラークラスのキャラだが、全員、既存の枠から抜けきらない印象。よく言えば王道と言えるのかもしれないが、私はテンプレと感じてしまった。

ヒロインも妹も可愛く描けている部分もあるだけに、非常に惜しいと思う。魅力的じゃないかと言ったら魅力的な部分は多々ある。それだけに、露骨にあざとい描写やテンプレ的既視感が邪魔しているのが残念なのだ。

あと根本的にやっぱり、キョンシー設定がいらない。普通にツンデレの妹でいい。

 

結局、ツカミのために取って付けた奇異な設定を持て余している漫画、というのが最終的な感想になる。

作者は普通の妹ラブコメをやりたかったが、編集がそれでは弱すぎると感じて無理やり付けさせたのだろうか? と勘ぐってしまう。

イデアを練り込まず、思い付きのままで奇異な設定を持ち込むとロクなことにならないと感じさせてくれた作品だった。

 

最後にフォローしておくと、絵柄はスッキリと読みやすいので好みだった。

それから、上で露骨にあざといとか書いてるけど、私個人がそういう表現に敏感なので過剰に感じてしまう部分もあると思う。ラブコメというジャンルの中で相対的に見ればむしろマイルドと言えるかもしれない。