【翁の漫画評】ピンポン 松本大洋 90点
タイトル:ピンポン
作者:松本大洋
連載期間:1996~1997年 完結(全5巻)
評価点:90点
あらすじ(公式引用):
月本(通称・スマイル)と星野(通称・ペコ)とは幼馴染み。小学生時代に駅前の卓球場タムラでラケットを握っていた頃からの仲だ。天才肌の星野はいつも好き勝手やり放題。今日も部活をさぼっていた。先輩たちに「星野を部活に連れてこい」と命令される月本だったが…
祝!水谷選手、日本人選手卓球個人戦初メダル!
熱戦続きで、見ていて大興奮。団体戦でも中国選手を破るなど素晴らしかった。
ということで、今日は卓球漫画を紹介しよう。
『ピンポン』は、2002年の実写映画化、2014年のアニメ化と二度の映像化もあって、最も知名度の高い卓球漫画と言えるだろう。また、松本大洋先生の作品としてもおそらく最も知られていると思う。
全五巻の短い物語ということもあり映像作品もよくまとまっていたが、ヒットの要因はやはり原作漫画の面白さあってこそだ。
ピンポン ― 2枚組DTS特別版 (初回生産限定版) [DVD]
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2003/02/14
- メディア: DVD
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映画版は、窪塚洋介や中村獅堂の怪演が話題を呼んで大ヒット。
アニメ版は見事に原作の雰囲気を再現していた。
ストーリーとしては非常に王道の青春スポーツもので、捻ったところはほとんどない。
奔放型のペコと内向的なスマイルはどちらも天才型だが、スポ根的な努力描写もキッチリ描かれている。主役2人だけでなく凡人代表のアクマ、努力型のチャイナやドラゴン、顧問の小泉先生、登場人物それぞれの苦悩や挫折を描く手腕はさすがの一言。
特にアクマのキャラクターは白眉。才能で劣りながら努力で鳳仙海王学園のレギュラーを勝ち取るも、開花した才能の前に成すすべもなく散り、グレてみるもグレきれず、試合会場に来てしまう。ああホロ苦き青春。だいたいの人間は、アクマほどの努力もできずに諦めちまうんだけど。
アートスタイルは天下一品。
学校の教室。体育館。試合会場。電車の中。小泉の家。海辺。
定規を一切使わない独特の描線が、画面からえもいわれぬ郷愁を生み出している。
かと思えば、試合のシーンでは卓球のスピード感、迫力、緊迫感が伝わってくる。
芸術的かつ娯楽的。これを満たすことができる作家は大友克洋…宮崎駿…荒木飛呂彦…
井上雄彦…決して多くない。
わりと本気で思っているのだが、異能力を使わない卓球漫画では、もうこれ以上の作品は出てこないかもしれない。(『ベイビーステップ』くらいのやつを卓球でやってほしい)
間違いなくこの先も金字塔であり続けるであろう本作。
映画版、アニメ版と合わせてご照覧あれ。