【翁の漫画評】HELLSING 平野耕太 84点
タイトル:HELLSING
作者:平野耕太
連載期間:1998~2009年 完結(全10巻)
評価点:84点
あらすじ(公式引用):
舞台は英国。吸血鬼による暴虐な事件が横行していた。そこで結成されたのが、反キリストのバケモノを狩る機関 王立国教騎士団 通称「HELLSING機関」。その一員である主人公 アーカードは吸血鬼討伐のエキスパート。彼自身も吸血鬼であり、銃で撃たれようと、首をもがれようとその肉体は不死身。事件に巻き込まれ吸血鬼の体となってしまったセラス・ヴィクトリアも機関に加わり、団長 インテグラルの指揮のもと、今日も吸血鬼事件の鎮圧に向かう。
「ヤングキングアワーズ」というマイナー誌をメジャーに近いラインまで押し上げた原動力といっていい、ある意味では伝説的な作品。
2回もアニメ化されている割に、なんというか実状以上に「マニアック」とか「カルト的」なイメージがあるが、実のところ内容は単純明快。
"吸血鬼を狩る吸血鬼"、"鋼線でたたかう執事"、"重火器でたたかう婦警"、"銃剣でたたかう神父"、"無頼な傭兵軍団"、"英国国教騎士団"、"バチカンの戦闘機関"、"ナチスの戦争狂"、"魔弾の射手"、"シュレディンガーの猫"etc...
ようするに、高2男子が好きな要素を詰め込んだ漫画なのだ。素晴らしい。
↑かっこよすぎる登場キャラクターたち
また、近年でここまでナチスの残党を前面に押し出した作品っていうのも、あまりないのではないか。鉤十字やナチス式敬礼が平気でバシバシ出てくるが、大丈夫なのか、と当時は思った。
ある意味ヤングキングだからこそ載せられた漫画なのかもしれない。少なくともモーニングやビッグコミックで載せられるとはあまり思えない…。
この漫画でおそらくもっとも有名な場面が、4巻でナチスの少佐が戦争開始の大演説をかます場面だろう。
いわゆる、「諸君、私は戦争が好きだ」とか「よろしい、ならば戦争だ」とかいうやつだ。
演説が見事すぎて、たくさんの改変コピペが作られた。
こういう狂ったセリフを言わせたら平野耕太先生は随一の作家だと思う。
リアルタイムで読んだ瞬間は本当に体が震えたものだ。
ただ、巻末を読む限り平野先生自身が狂っているという疑惑もぬぐえない。
twitterも狂っている。
とはいえ、万人に人気の出るような作品ではないのもわかる気がする。
女性でこれが好きっていう人もあまり聞いたことがない。なぜだろう?
アーカードは美形の吸血鬼だし、ウォルターは執事だし美少年なのに。
アメコミを思わせる線の太い画風のウケが悪いのかもしれない。
全10巻と短くまとまっている割に読みごたえはかなりあるので、未読の方には是非まとめ読みをおすすめしたい。
続刊を待ち続ける苦しみを味わわずに一気読みができるのはうらやましい限りである。
ただし、以後『ドリフターズ』の続刊を待ち続けるという苦しみが待っているのであるが…。